
株式会社ナカムラ 専務取締役 / プロデューサー 中村慎吾 様
切っても切っても同じ絵柄が現れる「組み飴(あめ)」をオリジナルデザインでオーダーできるサービス「まいあめ」を運営するのは、愛知県名古屋市で菓子問屋を営むナカムラ。これまで、ノベルティや販促に最適なオリジナルキャンディーを制作し、1万を超える企業・団体のロゴやキャラクター、メッセージを組み込んできました。
そんな同社が脱炭素への取り組みを本格化させたきっかけは、「環境に配慮した飴(あめ)」を求める企業からの声でした。商品開発を進める中で、「生まれたばかりの子どもの未来を思い、環境を考えた商品づくりの必要性を実感した」と中村専務は振り返ります。
その思いから誕生したのが、化学肥料や農薬に頼らない原料を使ったオーガニックキャンディーです。製造過程における環境負荷を可視化したところ、同じ手法でつくられた従来品と比べ、CO2排出量を44%削減できていることが明らかになりました。
さらにこの商品を「カーボンニュートラルキャンディー」として顧客へ届けるため、ナカムラはe-dashのJ-クレジット調達サービスを活用し、実質的にCO2排出量ゼロを実現。
「未来の世代に、環境に配慮した選択肢があるという体験を届けたい」ーーその挑戦の背景と取り組みに迫りました。

━━ナカムラの事業内容について教えてください。
中村慎吾様(以下、中村): 当社は1963年に祖父が創業した菓子問屋で、名古屋市西区という駄菓子メーカーや卸問屋が集まる駄菓子のメッカでスタートしました。
現在は、問屋業と並行して、企業が販促用として配るノベルティー飴サービス「まいあめ」を展開しています。父が構想を練り、腕の良い組み飴職人とタッグを組んで、2007年頃から始まりました。
このサービスの特徴は、飴を単なるお菓子ではなく、情報を伝えるツールとして捉えている点です。私たちは飴をメディアと位置づけ、お客様の想いやブランドメッセージを届ける手段として提案しています。味や技術力はもちろん、こうしたユニークな視点も評価され、年々、お取引は増えています。
こうした広がりの先に私たちが見据えているのは、「技術の継承」です。組み飴の職人技を次の世代へ受け継いでいくためには、持続可能なビジネスモデルを築き、職人という仕事に魅力を感じてもらう必要があります。その上で飴づくりという文化を、次の時代へしっかりつなげていきたいと考えています。
━━飴をコミュニケーションツールとして捉えたのは、どうしてですか?

「まいあめ」のウェブサイト。これまで手がけたオリジナルデザインの組み飴が並べられている
中村: 飴は「あめちゃん」と親しみを込めて呼ばれるように、擬人化されやすい一面があります。そこから、ちょっとした会話のきっかけになったり、優しいやり取りが生まれたり。そんな飴の特性に魅力を感じて、「コミュニケーションツール」として捉えるようになりました。
加えて、当社では飴を単なるお菓子ではなく、「食べられるチラシ」として活用しています。飴そのものに情報やデザインを載せることで、お客様のメッセージを届ける手段にもなります。こうした広告的な観点からも、飴には「伝える道具」としての大きな可能性があると感じていました。

「ひとつぶ分だけ、世界を良くする。」と打ち出す、オーガニックキャンディー「CanWe?」。
━━ 今回、環境をテーマにした飴の開発に取り組まれた背景を教えてください。
中村:売り上げを伸ばす方法を模索する中で、組み飴は職人の手作業によってつくられるため、急激に生産量を増やすことが難しいという課題がありました。そこで、通常の飴における新商品を開発できないかと検討を進めていました。
一方で、ここ10年ほどはグミなどの人気に押され、キャンディ市場は低迷。売れているのは「のど飴」のような機能性商品に限られており、「どんな打ち手があるのか」を日々探り続けていました。
転機になったのは、2019年ごろから法人のお客様から「環境に配慮した飴はありませんか?」という問い合わせが増えてきたことです。
そうした声にどう応えるかを考える中でたどり着いたのが、日本にはありそうで実はまだない「オーガニックキャンディー」でした。
日本では「オーガニック」というと健康や美容にいいというイメージが強いですが、本来は、化学肥料や農薬を使用しない、環境負荷の少ない生産方法や製品を指します。
そこで、環境にやさしい飴としてオーガニックキャンディーを世に出し、「一粒の飴から始まる環境活動」という新しい価値を提案できるのではないかと考えたのです。
さらに、オーガニック市場は、欧米ではすでに数兆円規模に成長しており、日本でも2022年時点で約1,500億円と、まだ伸びしろがある分野です。この可能性も後押しになりました。
━━ 開発は、どのように進めましたか?
中村:正直、非常に大変でした。有機認証の取得に向けて、有機原料の調達や国の認証機関による審査、製造基準のクリアなど、多くのハードルがありましたが、2年かけて世界中から原材料を探し出し、協力工場とともに認証を取得。ようやく商品化にこぎつけました。
━━ 消費者向けに発売された、日本初のオーガニックキャンディー「CanWe?」は従来の製品と比べてCO2排出量を44%削減したそうですね。
中村:オーガニックキャンディーの開発を進めていた2020年に子どもが生まれたことをきっかけに、環境への意識が一段と高まりました。「未来の世代に、環境に配慮した選択肢があるという体験を届けたい」という想いが、より強くなったんです。
その中で感じたのは、「オーガニックだから環境にやさしい」と伝えるだけでは、消費者にとってはどうしても漠然とした印象になってしまうのではないか、ということ。環境負荷の低さをもっと具体的・客観的に伝えられないかと考え、着目したのが、定量化がしやすいCO2排出量でした。
そこで活用したのが、「デカボスコア」というサービスです。Earth hacks株式会社(以下、Earth hacks)が提供するもので、商品やサービスのCO2排出削減率を数値として可視化できるのが特長です。
スコア算出に向けた調査を進める中で、一般的なキャンディーでは、CO2排出の多くが化学肥料の製造段階で生じていることがわかりました。一方、「CanWe?」は、原料をすべてオーガニック素材に切り替えたため、結果として、従来品と比べてCO2排出相当量を44%も削減することができました。(※1)
※1:デカボスコア「myame CanWe?」

━━「デカボスコア」の算定後、さらに「カーボンニュートラルキャンディー」を構想したのはなぜでしょう?
日本政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、プライム上場企業にはCO2排出量の開示が義務づけられるなど、規制も厳しくなっています。こうした流れの中で、企業の脱炭素への取り組みは今後ますます加速していくのは間違いありません。
そう考えたとき、「せっかくここまで環境負荷を減らせたのなら、いっそ『ゼロカーボン』を目指した方が世の中のためにもお客様のためにも良い」との結論に至り、法人向けの「カーボンニュートラルキャンディー」の企画・販売をスタートさせました。
実現に向けた方法を検討していた際に、Earth hacksからご紹介いただいたのが、同社と同じ三井物産グループのe-dashでした。
e-dashのご担当者に相談を重ね、最終的には、「J-クレジット」を活用し、残りの56%のCO2排出量をオフセット(相殺)するという方法を取ることにしました。
━━「J-クレジット」にはさまざまな種類がありますが、その中で森林由来のクレジットを選ばれたのはなぜですか?
元々は当社の事業と親和性のある農業や食品の分野でクレジットを探していましたが、あまり適したものがなく、最終的には森林由来のクレジットを選びました。身近に林業に携わる友人がいることもあり、「このクレジットを活用することで、林業の担い手不足解決に少しでも貢献できるならば、自分も共感を持って取り組める」と感じたからです。 飴づくりも林業も、手仕事の技術を次の世代へ受け継いでいくという点で通じるものがあり、当社ではこの「技術を守る」という思いを事業の根幹に据えています。そうした背景もあって、「林業を守る」という考え方にも自然と親しみを覚えました。
カーボンクレジットは、単にCO2を相殺するだけではなく、「なぜそのクレジットを活用するのか」というところに意味やストーリーを持たせられる点にも面白さや価値があると感じています。
━━今回、e-dashの「J-クレジット調達サービス」をご利用した感想を聞かせてください。
中村:最初は難しそうだなと構えていましたが、e-dashのサポートのおかげで、想像していたよりもかなりスムーズかつ簡単に調達することができました。
━━ 脱炭素に向けた今後の取り組みや展望を教えてください。
中村:「カーボンニュートラルキャンディー」は、今後も法人向けに提案していく予定です。企業の環境対応や福利厚生の取り組みの中でご活用いただくことで、SDGsに向けたアクションを後押しできるツールになればと考えています。
この商品は、消費者向けに展開している「CanWe?」と中身は同じですが、「カーボンニュートラルキャンディー」にはカーボンクレジットが付与されている点が異なります。将来的には「CanWe?」にもクレジットを付けていきたいです。
オーガニックや有機食品への関心が高まる中、原材料をつくる農家さんは増えてきているものの、それを加工食品として届ける体制はまだ十分とはいえません。だからこそ、私たちのような企業が地道に売上を積み重ねることで、有機原料を扱うメーカーや認証を取得する工場が増えるきっかけにもなればと願っています。
そのためにもまずは、「オーガニックキャンディー」というカテゴリ自体を育て、市場として根づかせることが欠かせません。
また、「カーボンニュートラルキャンディー」というアナログな手段だからこそ実現できるアプローチにも、大きな可能性を感じています。将来、消費者が「環境への配慮」を基準にお菓子を選ぶような時代が訪れたとき、自然と選ばれる存在であるために——選択肢を増やすことが人の豊かさにつながると信じ、これからも飴を通して環境問題に取り組んでいきます。

株式会社ナカムラのオフィス(愛知県名古屋市)
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