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旭川市旭山動物園

旭山動物園が「環境発信の拠点」として歩み出す、Zero Carbon ZOO(ゼロカーボン・ズー)という新たな価値

2026.03.31

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旭川市旭山動物園 園長 田村 哲也 様

「動物の故郷を守りましょうと伝えながら、自分たちは化石燃料に頼っている。その事実にハッとしたんです」

動物本来の生き生きとした姿を見せる「行動展示」で、全国にその名を知られる旭川市 旭山動物園。開園以来、「伝えるのは、命」という信念を貫いてきた同園が、今、カーボンニュートラルな取り組み「Zero Carbon ZOO(ゼロカーボン・ズー)」を始動させています。

温室効果ガス排出量の可視化に取り組んだ結果、見えてきたのは「来園者の移動」が全体の半分を占めるという、園の努力だけではコントロールしきれない事実でした。

その数値を単なるノルマとして捉えるのではなく、来園者の「気づき」へとつなげていく。動物園の新たな役割を模索する、旭山動物園らしい脱炭素のあり方を伺いました。

目次

「伝えるのは、命」―その原点が、脱炭素へとつながった

━━旭山動物園といえば「行動展示」で有名ですが、あらためて運営において大切にされていることを教えてください。

田村園長(以下、田村):私たちが大切にしていることの1つに「伝えるのは、命」というモットーがあります。動物園は「見せる」場所ではありますが、それ以上に、命の尊さや素晴らしさを「伝える」ことにこだわってきました。今では当たり前になった飼育スタッフによる動物の解説「ワンポイントガイド」も、実は旭山動物園が全国初だと言われています。

よく動物園は「自然の玄関口」とも言われますが、私たちは動物を通じて、その先にいる野生動物が暮らす故郷(ふるさと)が今どうなっているのかを知って欲しいと考えています。目の前の動物が生き生きと動く姿を見て感動し、そこから彼らの故郷の環境にまで関心を広げてもらう。来園者と動物、そして故郷との架け橋になることこそが、私たちの存在意義だと思っています。

━━今回、脱炭素に取り組んだのは、動物の故郷の環境と関係があるのでしょうか。

田村:まさにそうです。ある時にハッとしたんですよ。私たちは来園者に「環境を守りましょう」とか「動物の故郷は、温暖化で大変なことになっています」といったメッセージを伝えていますが、よく考えたら自分たちの施設自体はどうなんだと。

ここは寒冷地の動物園で冬は暖房が欠かせませんが、燃料はすべて化石燃料に頼っています。また、動物たちの餌の調達でも、輸送や保管のプロセスも含め、温室効果ガスを大量に排出しています。この「自分たちが環境に負荷をかけている」という事実に、正面から向き合わなければならない。

動物は与えられた環境の中でしか生きられませんが、人間は環境を変える力を持つ存在です。人間が変えてしまった環境に対して、人間である私たちが責任を持って向き合っていく。その姿勢を示すことこそが、本当の意味で「命」と向き合うということなんじゃないかと思いました。

ちょうどそのころ、2024年4月に旭川市が「地球温暖化対策実行計画」を改定し、脱炭素社会に向けた対策を一段と強化したこともあり、旭山動物園でのカーボンニュートラルな取り組み「Zero Carbon ZOO」が、市の脱炭素を牽引する象徴的なプロジェクトとして本格始動しました。

可視化で見えた「5割」という事実。ありのままを共有し、対話のきっかけに

「Zero Carbon ZOO」が目指すもの(提供:旭山動物園)

━━「Zero Carbon ZOO」は、どのような姿を目指しているのでしょうか。

田村:単に再エネ・省エネ設備を導入してカーボンニュートラルを目指すだけではなく、来園者の皆さんに持続可能な生活スタイルや生物多様性を考える体験を提供することも含めて目指しています。

その第一歩として、2023年度分の排出量を自分たちで調べて算定し、2025年4月に結果を公表しました(※)。ただ、毎年継続していくには限界があることも痛感したんです。妥当性の検証や、誰が担当してもできる再現性の観点からも、改めて専門的な知見が必要だと感じました。

2025年4月21日「旭山動物園、令和 5 年度 Scope1・2・3 の温室効果ガス排出量を算定・公表」

━━そこで市の選定を経て、e-dashが伴走させていただくこととなりました。あらためて算定・分析を行った結果、どのような発見がありましたか。

田村:Scope 3のウェイトが全体の約9割を占め、なかでも来園者の移動に伴う排出量が全体の5割に達しているという事実は、大きな衝撃でした。動物園にとって来園者が増えるのは嬉しいことですが、この排出量は自分たちだけでコントロールできる領域ではありません。

しかし、あえて数字を隠さずお見せすることで、皆さんに「動物園と一緒に、何か行動できることはないか」と考えてもらうきっかけにしていただけたらと。まずは現状を「認識してもらうこと」が大事だと考えています。

━━園のスタッフの皆さんにはどのように共有されたのでしょうか。

田村:ただの報告で終わらせたくなかったので、月一回の「勉強会」で共有しました。普段は飼育スタッフが自身の興味のあるテーマを自由に発表する場なのですが、現場のみんなが「自分ごと」として考えられるように、この場を活用しました。

すると、「自転車で来ている人もいるから、環境負荷の少ない行動をとった人には何かインセンティブがあったらいいんじゃないか」といった提案が次々と出てきたんです。

負荷をかけている人に制限を強いるのではなく、負荷をかけていない人に喜んでもらえる仕掛けを。現場からこうした声が上がってきたことで、同じ方向を向いているんだなと実感しました。

園内の至る所で見られる飼育スタッフによる手書きのパネルには環境のメッセージが込められたものも

楽しみながら「気づき」を持ち帰る。動物園から広がる脱炭素

━━e-dashからも来園者の行動変容に向けた具体的な施策を提案させていただきましたが、いかがでしたか。

田村:e-dashさんからの提案は大きなヒントになっています。今、新シーズンに向けて「環境フェス」を企画しています。これまで当園とご縁のあった企業や団体の皆さんも、それぞれ素晴らしい環境への取り組みやワークショップを実施されています。そうした方々にお声がけをして、一堂に会するイベントをここ旭山動物園を舞台に開催したいと考えているんです。

「環境問題を学びに行くぞ」と身構えて行くのではなく、動物を見るのを楽しみにふらっと行ったら、たまたま「環境フェス」が開かれていた。そこで「身近な企業が環境保全のために、こんなこともやってたんだ」と偶然知る。そんなちょっとした「気づき」を一個でも二個でも持ち帰ってもらえるような機会を作りたいですね。

かつての動物園は「見世物小屋」のようなところからスタートした歴史がありますが、今は「環境教育の場」としての役割を強く期待されています。種の保存も環境保全も、動物園の中だけで終わる話ではありません。来園者の皆さんや企業など「みんなと一緒にやっていく」ことこそが、これからの動物園にとって大事なことだと思っています。

━━その「みんなで」という想いは、今後の具体的なアクションにもつながっていくのでしょうか。

田村: そうですね。すでにゼロを実現しているScope 2に加え、Scope 1についてもハード面での対策を加速させます。旭川の豊富な森林資源を利用した「木質バイオマス」の活用や、次世代の「ペロブスカイト太陽電池」のような最先端技術の実証実験の場として動物園を使っていただくことも考えています。

園内6か所にあるペレットストーブ。園内の剪定枝から作られた木質ペレットを燃料に活用している

また、Scope 3に関しては、動物の糞尿を堆肥化して牧草を育て、それを動物が食べる「園内循環」の姿をお見せすることで、エネルギーだけではない脱炭素のあり方を伝えたいですね。

その上で「カーボン・オフセット」も組み合わせていきますが、ただ単に動物園がクレジットを購入して帳尻を合わせるのではなく、来園者の皆さんと一緒にカーボンニュートラルを目指す仕組みにしたいなと。園内のショップの売り上げの一部をカーボンクレジットの購入に充てることで、皆さんのお買い物が巡り巡って野生動物の故郷を守ることにつながっていく。こうした参加型の取り組みも具体化させていきたいですね。

━━最後に、今回の取り組みに関わってきた旭川市やe-dashに対して、どのような想いを持たれているか聞かせてください。

田村:今は動物園が旭川市のモデルケースとして先行していますが、この脱炭素の動きをいかに市全体へ広げていけるか。旭川市とともに市全体を巻き込んでいこうと思っています。

また、e-dashさんについては、今回のご縁に本当に感謝しています。算定作業を専門的な視点で、属人化しない仕組みとしてまとめていただいたほか、削減策や来園者向けの施策、情報発信のやり方など、プラスアルファの提案までいただけたことは非常に心強かったです。

同じ想いを持っている仲間と言ったら大げさかもしれませんが、これからもともにこの環境問題や脱炭素の取り組みに向き合っていける、そんな関係でありたいと思っています。

旭山市 旭山動物園(北海道旭川市)

企業情報

会社名

旭川市旭山動物園

所在地

北海道旭川市東旭川町倉沼

業界

  • 自治体

事業内容

野生動物の飼育・展示、種の保存(繁殖)、環境教育の普及啓発、野生動物の調査・研究、およびそれらに付随する施設管理・サービス提供

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Scope 3算定初級 算定手順と必要なデータ

成長は、削減しない。

あらゆる企業が、自社に適した道筋で
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